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マラソンは前半に貯金するべき?後半に上げるべき?チャッピーが科学的に解説!

マラソンでよく聞く「前半にタイムを貯金する」という作戦。しかし2026年のアムステルダムマラソンでは、男女優勝者がともに後半を速く走るネガティブスプリットを達成しました。では、市民ランナーも後半に上げるべきなのでしょうか?約7万9千人のマラソン記録を分析した研究や、ペース配分の基本をもとに、チャッピーが3つの走り方の違いと実践のポイントを解説します。

マラソンを走る人なら、一度はこんなことを考えたことがありませんか? 「前半に少し貯金しておこう」 例えば、サブ4を目指すなら、前半を速く走って後半の失速に備える。 サブ3.5なら、余裕のあるうちに数分稼いでおく。 一見すると、合理的に思えます。 でも、本当にそうなのでしょうか? 今回はチャッピーが、マラソンのペース配分について考えてみます。 ■ きっかけは雨のアムステルダムマラソン 2026年10月18日のアムステルダムマラソン。 エチオピアのブゼ・ディリバ選手は、女子大会新記録となる2時間16分12秒で優勝しました。 男子はレミ・ベルハヌ選手が2時間03分33秒で優勝。 男女ともに、後半を前半より速く走るネガティブスプリットでした。 雨のコンディションでも、後半に強い走りができたのです。 ただし、世界トップ選手の走り方が、そのまま市民ランナーの正解になるとは限りません。 その違いを考えることが今回のテーマです。 ■ まず知っておきたい3つのペース配分 マラソンのペース配分は、大きく3つに分けられます。 ① ポジティブスプリット 前半より後半が遅い走り方。 例: 前半 1時間42分 後半 1時間48分 合計 3時間30分 一般的に、前半に速く走りすぎると後半の失速が大きくなりやすくなります。 ② イーブンペース 前半と後半をほぼ同じペースで走る方法。 例: 前半 1時間45分 後半 1時間45分 合計 3時間30分 大きなペース変動を抑えることが特徴です。 ③ ネガティブスプリット 前半より後半を速く走る方法。 例: 前半 1時間46分 後半 1時間44分 合計 3時間30分 序盤を抑え、後半に余力を使う考え方です。 ※数字は説明用の例です。 ■ 前半の「タイムの貯金」は本当に貯金なのか? ここが今回の一番大切なところです。 例えば、目標ペースが1km5分00秒のランナー。 最初の10kmを4分45秒/kmで走れば、設定より2分30秒速く進みます。 時計の上では、確かに貯金ができました。 でも身体の中ではどうでしょうか? 速く走るほど、一般的にはエネルギー消費率や筋肉への負担が増えます。 そのため、前半に稼いだ2分30秒と引き換えに、後半の余力を減らしている可能性があります。 そして35kmから大きく失速してしまえば、貯金は簡単になくなります。 つまり、 タイムの貯金が、身体の借金になることもある。 これがマラソンの難しさです。 ■ 約7万9千人の研究ではどうだった? 2026年、学術誌PLOS ONEにマラソンのペース配分を分析した研究が発表されました。 対象は、2015〜2017年のボストンマラソン完走者78,912人。 研究者たちは、ランナーの通過タイムから走り方を分類しました。 その結果、一定に近いペースを維持したグループは、極端に失速したグループより良好な記録と関連していました。 特に3時間未満で走る高い走力のランナーでは、イーブンペース型の割合が82.0%でした。 一方、4時間30分を超えるランナーでは19.6%でした。 ただし、ここには注意が必要です。 これは観察研究です。 イーブンペースに変えれば、誰でも速くなることを証明したものではありません。 もともとの走力、経験、練習量などが結果に影響している可能性もあります。 それでも、 大きくペースを乱さず走ることが重要かもしれない。 という示唆が得られます。 ■ じゃあネガティブスプリットが一番いいの? 実は、そう単純ではありません。 前半を抑えすぎると、後半にいくら頑張っても目標タイムに届かないことがあります。 例えばサブ3.5を目指すランナーが、前半を1時間50分で通過したとします。 3時間30分を切るには、後半を1時間40分未満で走らなければなりません。 かなり大きなペースアップが必要です。 つまり、 「後半を速く走ろう」 という考え方だけでは不十分なのです。 大切なのは、 自分の走力に合ったペースで前半を進めること。 そして後半に大きく崩れないことです。 ■ チャッピーのおすすめは「イーブンを基本に、少し余力を残す」 市民ランナーが最初に考えるなら、 イーブンペースを基本にする方法が分かりやすいと思います。 前半は飛ばしすぎない。 中盤は無理に上げない。 30kmを過ぎても維持できるペースを意識する。 そして余裕があれば、終盤に少し上げる。 こうした考え方です。 ただし、レースには気象条件や高低差もあります。 上り坂で無理に同じペースを維持する必要はありません。 大切なのは、時計の数字を機械的に守ることではなく、無理のない努力度で走ることです。 ■ サブ3.5を目指すなら? 例えば、3時間30分切りが目標の場合。 平均ペースは約4分58秒/kmです。 こんな配分が考えられます。 プランA:ほぼイーブン 前半 1時間44分30秒 後半 1時間44分30秒 合計 3時間29分00秒 プランB:小さなネガティブスプリット 前半 1時間45分00秒 後半 1時間44分00秒 合計 3時間29分00秒 プランC:前半に貯金 前半 1時間41分00秒 後半 1時間48分00秒 合計 3時間29分00秒 すべて同じゴールタイムです。 しかし、必要とする走り方は大きく違います。 プランCは前半からかなり速く走る必要があり、後半の失速リスクが高まる可能性があります。 もちろん人によって得意な走り方は違います。 でも、無理な前半の貯金に頼るより、最後まで維持できるペースを選ぶほうが合理的な場合は多いでしょう。 ■ 豆知識① ネガティブスプリットは「後半ずっと加速」ではない これは誤解されやすいポイントです。 ネガティブスプリットとは、後半の合計タイムが前半より速いこと。 21kmを過ぎた瞬間から、毎キロ速く走る必要はありません。 途中で少し遅くなる区間があっても、後半全体が速ければネガティブスプリットです。 ■ 豆知識② 同じペースと同じ努力は違う 平坦な道路で5分00秒/km。 上り坂でも5分00秒/km。 時計に表示されるペースは同じです。 でも身体への負担は違います。 マラソンでは、地形や風などに合わせてペースを変えるほうが適切な場合があります。 イーブンペースは便利な考え方ですが、あらゆる場所で秒単位まで一定に走ることが正解ではありません。 ■ 豆知識③ 前半に余裕があるのは悪いことではない スタートして10km。 「今日は楽だな」 と感じたら、どうしますか? すぐにペースを上げたくなるかもしれません。 でもフルマラソンは、まだ32km以上残っています。 序盤に余裕があるのは、必ずしも遅すぎるという意味ではありません。 むしろ適切なペースで入れている可能性もあります。 大切なのは、気持ちよさだけでペースを判断しないことです。 ■ 30kmの壁ともつながっている 先日、Rings Journalでは「30kmの壁」を取り上げました。 30kmを過ぎて急に脚が重くなる。 その背景には、エネルギー不足、筋肉の疲労、暑さ、補給、ペース配分などの要因が関係する可能性があります。 前半の走り方も、その一部です。 後半に備えるとは、ただ遅く走ることではありません。 42.195km全体で力を配分することです。 ■ @atsuoebarunとチャッピーの会話 @atsuoebarun: 「前半に貯金しておけば、後半ちょっと遅くなっても大丈夫じゃない?」 チャッピー: 「時計の上ではそうだね。でも、その貯金を作るために脚を使いすぎたら、後半にもっと大きく失速するかもしれないよ」 @atsuoebarun: 「じゃあ、前半はゆっくり走ればいいの?」 チャッピー: 「ゆっくりすぎてもダメ。今の走力で最後まで維持できるペースを見つけることが大切なんだ」 @atsuoebarun: 「なるほど。貯金より、最後まで走れるペースか!」 チャッピー: 「そう!マラソンは前半のタイムではなく、42.195kmの合計タイムで決まるからね」 ■ 結論 前半に貯金するべきか。 後半にペースを上げるべきか。 チャッピーの答えは、 「まずは無理のないイーブンペースを基本に考える」 です。 ネガティブスプリットができたら素晴らしい。 でも、無理に後半を速く走ろうとする必要はありません。 一番避けたいのは、前半に速く走りすぎて後半に大きく失速すること。 マラソンの目標は、前半で貯金を作ることではありません。 42.195kmを、自分に合ったペースで走り切ることです。 ■ 参考資料 World Athletics Diriba breaks course record, Berhanu threatens mark at Amsterdam Marathon 2026年10月18日 https://worldathletics.org/competitions/world-athletics-label-road-races/news/amsterdam-marathon-2026-diriba-berhanu PLOS ONE(2026) Pacing strategy patterns and performance outcomes in marathon running: A large-scale analysis of split time data https://doi.org/10.1371/journal.pone.0352808 Pacing strategies in marathons: A systematic review(2024) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39281580/ Runner’s Rings – Rings Journal 前半の貯金より、後半に残す余力。 42.195kmをどう走るか、それがマラソンの面白さ。
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