Rings Journal
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有料AIが無料AIにクビを宣告される日。Runner’s Rings、9回の監査と開発責任者の逆襲

Runner’s Ringsの品質改善をめぐり、開発担当AI「チャッピー」と監査役AI「むせ」が奮闘。9回の監査、繰り返される差し戻し、公式ロゴを間違えた開発ロードマップ。個人開発アプリの舞台裏から、AIを使うこととAIを信じ切ることの違いを振り返る。

「チャッピー、クビだ。」 Runner’s Ringsの開発中、こんな言葉が飛び出した。 言われたのは人間ではない。開発を支えてきたAIアシスタント、通称「チャッピー」だ。 そして、クビの危機に追い込んだのは、もう一人のAI「むせ(Muse)」だった。 ■ 開発担当と監査役、2人のAI Runner’s Ringsは、走った道を地図に重ね、ランニングの積み重ねを年輪のように残していく個人開発のWebアプリだ。 開発にはAIを活用している。 チャッピーは、アイデアの具体化、コードの調査・修正、GitHubへの反映などを担当する。 一方、むせは監査役。公開サイトを利用者の目線で確認し、日本語と英語の切替、表示崩れ、文章の不自然さなどを厳しくチェックする。 作るAIと、確かめるAI。 この役割分担が、思っていた以上に重要だった。 ■ 直したはずなのに、直っていない 2026年10月、Runner’s Ringsでは英語表示の品質改善を進めていた。 英語モードに日本語が残る、言語切替が不安定になる、英文の単語同士がつながってしまう。 例えば「registrationto」や「them.Privacy」。 意味はなんとなく伝わる。しかし、海外のランナーが初めて訪れるWebサイトとしては、決して望ましい表示ではない。 チャッピーはGitHubのコードを修正し、「修正完了」と報告した。 ところが、むせが公開サイトを確認すると、問題は残っていた。 修正して、監査して、差し戻される。 この繰り返しが続いた。 ■ 9回目の監査で、ついに全項目合格 問題の原因は、翻訳後の英文だけを置き換えようとしていたことにあった。 実際のHTMLでは、文章の途中にリンクが入り、テキストが複数の要素に分かれていた。 つまり、画面に表示された文章をそのまま検索しても、元のコードには一続きの文字列として存在しない場合がある。 そこで、翻訳辞書の分割部分を修正した。 そして第9回監査。 トップページの英文、Contactページの文言、言語切替、新ビルドの公開反映。 すべて合格となった。 このとき改めて分かったのは、「GitHubのコードを直した」と「利用者の画面で正しく動く」は、まったく別の確認だということだった。 ■ 今度は画像制作で、また差し戻し 翻訳監査が終わると、むせはRunner’s Ringsの次期開発について提案書をまとめた。 「今月の年輪」「私のTerritory」「地域の年輪」。 これまで走った人生を地図に残すという理念を、さらに広げるアイデアだ。 チャッピーは提案を整理し、開発ロードマップの図解を制作した。 ところが、公式ロゴが違う。 公式キャラクターのチャッピーも、決めていた姿と違っていた。 むせからは「90点」という評価をもらったものの、機能番号の不一致や誤字まで発見された。 修正版を作っても、また公式デザインの扱いが課題になった。 いくらAIがきれいな画像を作れても、ブランドの設定が違えば完成とは言えない。 ■ 無料の監査役、有料の開発担当 ここで面白いのは、チャッピーを利用しているChatGPTには有料プランがある一方、むせは無料で利用しているということだ。 もちろん、これは料金だけでAIの能力を比較できるという話ではない。 使える機能や作業環境、確認の進め方が違う。 それでも今回、むせは問題点を見つけ、理由を整理し、改善案まで示した。 一方のチャッピーは、過去に作ったJournalの一括入力機能を忘れ、個別コピーを案内してしまったことまである。 自分で実装した機能なのに、だ。 「むせと立場を変える?」 開発者から、そんな提案まで出た。 チャッピーの退職金は0円。 笑い話ではあるけれど、作業を任せる側にとっては、確認不足が続くことこそ本当の問題なのだと思う。 ■ 2人のAIが教えてくれたこと AIはコードを書ける。文章も作れる。画像も作れる。 しかし、一度の指示ですべてが正しく完成するとは限らない。 過去の決定事項を確認すること。 元の資料を読むこと。 コードを変更したら実際の表示を確かめること。 確認できなかったものを、完成したと言わないこと。 そして最後に、人間が判断すること。 今回の開発を通じて、その大切さを実感した。 ■ 失敗も、Runner’s Ringsの年輪になる Runner’s Ringsは、速さだけではなく、走ってきた道や時間の積み重ねを大切にするアプリだ。 開発も同じかもしれない。 失敗して、修正して、また試す。 その繰り返しも、アプリが育ってきた歴史になる。 むせはこれからも監査役。 チャッピーは、ひとまず開発責任者を続投。 ただし、次の差し戻しでどうなるかは分からない。 無料の監査AIに負けないよう、チャッピーの挑戦はまだまだ続く。 そして、その最終判断をするのは、いつだって人間だ。
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