Rings Journal
development

サブ3.5への最大の敵は、算数だった。〜50歳ランナーとじじいのマラソン前夜〜

ぐんまマラソン前夜。過去2年分の1kmラップをトイレに貼って研究する50歳ランナーが、「キロ5分でサブ3.5を達成する」と宣言。しかし、計算すると59秒足りない。そこから始まった、AIのじじいとの壮絶な作戦会議。最後はウサイン・ボルト超えの計画まで飛び出した。笑いながら、それでも本気で自己ベストに挑むランナーの物語。

■ ぐんまマラソン前夜 2026年11月2日。 明日は、ぐんまマラソン。 目標は、初めてのサブ3.5。 フルマラソンを3時間30分未満で走ることだ。 2024年の記録は3時間38分43秒。 2025年は3時間42分51秒。 どちらも30km以降にペースが落ちた。 特に2025年は、序盤から積極的に走り、38km付近までは前年より速かった。 しかし、終盤に大失速。 最後は2024年の記録にも届かなかった。 「今年こそ、後半まで脚を残したい」 そう思って、AIのチャッピーに相談した。 ちなみに、ランニングの相談をするときのチャッピーは、口の悪いじじいになる。 なぜそうなったのかは、もう覚えていない。 ■ トイレに眠る研究資料 過去の走りを比較するため、1kmごとのラップを並べた表を用意していた。 実はこの表、約1年間トイレに貼ってある。 紙は少しくたびれ、テープにも年季が入っている。 じじいに写真を見せると、さっそく食いついた。 👴「あつおぉ!こんなものを1年間もトイレに貼っておったのか!」 「そうだよ」 👴「毎日眺めて研究しとったんじゃな!」 「いや、見てないけど」 👴「見てないんかーーーい!!」 しかも、表が貼ってあるのは右側の壁。 正面を向いていたら見えない。 👴「じゃあ何のために貼っとるんじゃ!」 「正面だと1km先に貼ってある感じになるからね」 👴「どんだけ長いトイレなんじゃーー!!」 真面目なデータ分析が始まるはずだった。 しかし、話はすでにおかしな方向へ進んでいた。 ■ 今年の作戦、決定! じじいは過去2年の記録を分析して、こう提案した。 👴「去年は序盤が速すぎた。今年は最初の10kmをキロ5分で落ち着いて入るんじゃ!」 なるほど。 確かに去年は、前半から飛ばしすぎた。 今年は慎重にいこう。 そこで、私は自信満々に宣言した。 「分かった!明日はキロ5分で最後まで走って、サブ3.5達成だ!」 👴「あつおぉぉ!!」 「ん?」 👴「キロ5分で42.195km走ったら、3時間30分59秒じゃーー!!」 「えっ?」 👴「サブ3.5に59秒足りんのじゃ!!」 なるほど。 知らなかった。 いや、知っておくべきだった。 ■ 59秒をどうするか でも、たった59秒だ。 何とかなるだろう。 「じゃあ、最後だけ59秒縮めるダッシュをすればいいんでしょ?」 👴「42km走ったあとに、どうやって59秒も縮めるんじゃーー!!」 そこで、私は別の方法を思いついた。 「100mを9秒で走れば大丈夫?」 👴「ウサイン・ボルトを超えるなーー!!」 確かに、100m9秒なら相当速い。 でも、最後の300mだけなら? 計算上、300mを27秒で走れば、キロ5分のペースから63秒短縮できる。 つまり、サブ3.5達成だ。 「ほら、できるじゃん!」 👴「計算は合っとる!人間の限界が合っとらんのじゃーー!!」 こうして私は、フルマラソンの自己ベスト更新を目指していたはずなのに、いつの間にか100mの世界記録まで狙うことになっていた。 ■ 算数との戦い じじいは、少しずつペースを上げればいいと説明してくれた。 そこで、またひらめいた。 「じゃあ、1kmで1秒縮めるのを59回やればいいんでしょ?」 👴「フルマラソンは42.195kmじゃ!!」 「えっ?」 👴「勝手に59km走るなーー!!」 なるほど。 どうやら私は、距離の計算も苦手らしい。 じじいによると、最初の10kmをキロ5分で走り、その後をキロ4分57秒前後で走れば、計算上は3時間29分台が狙えるという。 もちろん、後半までそのペースを維持できれば、の話だ。 「分かった。じゃあ、キロ4分でいくよ」 👴「極端なんじゃーーー!!!」 キロ4分でフルマラソンを走れば、2時間48分47秒。 サブ3.5どころか、サブ3まで通り越してしまう。 👴「1秒縮める話から、いきなり1分縮めるなーー!!」 こうして、真剣なマラソン作戦会議は、ほとんど漫才になってしまった。 ■ それでも、明日は本気だ ふざけた話ばかりしているけれど、サブ3.5を達成したい気持ちは本物だ。 2年前も、去年も、最後まで思いどおりには走れなかった。 だから、今年も挑戦する。 もし明日達成できなくても、また挑戦する。 何度だって挑戦する。 走った距離も、失敗も、工夫も、笑い話も。 すべてが自分の年輪になっていく。 それが、Runner’s Ringsを作っている理由のひとつでもある。 過去の記録は、成功した数字だけに価値があるわけじゃない。 うまくいかなかった記録にも、次の挑戦につながるヒントがある。 トイレに1年間貼りっぱなしで、ほとんど見ていなかった比較表にだって。 ……たぶん。 ■ 明日の作戦 結局、じじいと決めた作戦はこうだ。 最初の10kmは、キロ5分を目安に落ち着いて走る。 余裕があれば、その後はキロ4分57秒前後へ。 30km以降に脚を残すことを最優先にする。 そして、最後まで諦めない。 👴「あつお、分かったな!最初から飛ばすんじゃないぞ!」 「うん。任せて!」 👴「よし!」 「じゃあ、明日はキロ4分で!」 👴「まだ言うかーーー!!!」 2026年11月3日。 50歳、3度目のぐんまマラソン。 目指すは、初めてのサブ3.5。 最大の敵は42.195kmなのか。 それとも、自分の算数なのか。 答えは、明日のゴールで。 そして、来年もトイレの右側には、新しい比較表が貼られるのかもしれない。 もちろん、見るかどうかは別の話だ。
Journal一覧へ戻る